今回は散水スプリンクラーによくある誤解、「水圧を上げれば水は飛ぶんじゃないの?」という質問について取り上げます。
この誤解は、水の勢いや力が飛距離に直結するという考え方から生まれるものです。
実際には、水圧を上げるだけでは水を遠くに飛ばすことはできません。それに見合った「水量」が必要です。
この記事では、「水圧」と「水量」の関係を掘り下げて説明します。
性能表から読み解く。水圧と吐出水量のバランスが重要な理由
まずは、性能表を見てください。同じ水圧でも、遠くまで水を飛ばすためには吐出水量が増えることが性能表の「毎分吐出量」の欄からもわかります。
水圧は、水を押し出す力のことであり、スプリンクラーの性能に直接的な影響を与えます。
例えば、みなさんのご家庭の蛇口を少しだけ開いたときは勢いよく水が出たとします。このときの水量は少ないです。蛇口を全開にしたときに大水量になります。このときに水の勢いが落ちなければ全開の方が飛距離は出ます。しかし、全開のときに水の勢いが弱まれば飛距離は落ちます。
同じ水圧でも、より遠くまで水を飛ばすためには吐出水量を増やさなければなりません。これは、水圧だけでなく、水量も飛距離にとって重要な要素であることを示しています。
水圧が適切に保たれていても、吐出水量が不足するとスプリンクラーの性能を十分に発揮できないため、水圧と水量の両方を考慮する必要があります。
水量を増やすための「コスト増加」について
実際に水圧を上げた場合、スプリンクラーの飛距離が改善することがありますが、それには下記の問題があります。
水圧を上げると水の消費量も増加するため、無駄なコストがかかる場合があります。
さらに、十分な水量が供給されていないと、受水槽の設置やポンプの追加、大口径の配管に変更が必要になる場合があります。これには設備の更新が伴います。
これらの設備投資は、散水のためのコストを大幅に引き上げる可能性があるため、水圧を高めるだけで解決できる問題ではないことが理解されるべきです。
効果的なスプリンクラーの使用方法
水圧を上げずにスプリンクラーのカバー範囲を広げる方法もいくつかあります。
散水範囲を広げるためには、以下の点を考慮するとよいでしょう。
蛇口を大きい散水栓に変更する
水圧自体は変わらなくても、水量と水圧の低下を防ぐことで効率的に散水が可能です。これは、散水時間を短縮するために一般的によく行われる手法です。
適切なノズルやスプリンクラーの選定
現在の水量と水圧に最も適したノズルやスプリンクラーを選ぶことで、限られた条件で最大限の飛距離と水量を確保して、効率的に散水することが費用対効果の観点から重要です。
スプリンクラー本体の交換
大口径の散水栓や配管(20㎜~75㎜)があるのに見合わない小さいスプリンクラーを使用しているときは、より広範囲をカバーできる他機種のスプリンクラーに変更することで、飛距離を伸ばし、水量と増やして短時間に散水することができます。
これらの対策により、水圧を上げずともスプリンクラーの効果的な使用が可能になります。
さいごに
「水圧を上げれば水が遠くへ飛ぶ」という誤解は、水量とのバランスを考慮しないことから生じます。スプリンクラーの性能を最大限に引き出すためには、水圧と水量の両方を適切に調整することが求められます。水圧と水量の関係を理解することで、効率的かつ効果的な散水が実現可能です。
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